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 【2005年10月】
 ●チャーリーとチョコレート工場
 ●シンデレラマン
 ●ファンタスティック 4[超能力ユニット]
 ●NANA
 ●蝉しぐれ

●チャーリーとチョコレート工場 ★★半
 (2005・米)

 監督:ティム・バートン
 出演:ジョニー・デップ


ロアルド・ダールの原作は'70年代にも映画化されているが、頭のほうをちょっとだけしか観てないので、比較はできず、残念。
もともと原作は、『摩天楼』でゲイリー・クーパーと共演もした女優=パトリシア・ニールとの間に生まれた4人の子供を寝かせつけるために、即興的に語り聴かせた童話だったそうなので、いかにも子供が喜びそうな甘いお菓子がたっぷりと出て来るが、終わりにはちゃんと辛口の教訓も含まれていて、ダール家の家庭教育も兼ねていたかと思わせる。
ティム・バートンは、前作『ビッグ・フィッシュ』が好調だっただけに、つい期待したが、テーマ・パークのように見て廻る工場内の仕掛けが、いまひとつ驚きに至らず、不満が残った。
冒頭、老人を4人も抱えたオンボロ一軒家の貧しい生活が至極リアルに描かれるので、チョコレート工場のファンタジィにつなげるには、もうワン・クッション欲しくなるのだ。

●シンデレラマン ★★★半
 (2005・米)

 監督:ロン・ハワード
 出演:ラッセル・クロウ
    レネー・ゼルウィガー


正直、いかにもルーティンなハリウッド映画っぽい感じがし、あまり観る気がしなかったんだけれど、予想を遥かに越えて、これは充分に感動的な好篇だった。
何と言っても実話である点が強みで、予定調和的ハッピィ・エンドも、フィクションならよく出来たお話しで終わるところが、ここでは稀有の語り草として感じ入ってしまうのだ。
また、アメリカ映画の大部分を占める「家庭の幸福映画」には違いないのだが、大恐慌時代の市民生活の苦しさをかなり丹念に描いているので、とても真情に迫ってくる。
ボクシング映画としても近来の傑作で、試合場面は質・量ともにたっぷりと見応えがあり、かの圧倒的高評価の『ミリオンダラー・ベイビー』などよりは、ずっと説得力がある。
主役のふたりはどっちも好演で、役によく嵌っており、ラッソーは演技を感じさせないし、レネーは「しっかり女房」に成りきっている。
なお、本作から、これまでの[レニー]表記が[レネー]と改まって、本人の発音通りになったのは歓迎。
そんなに長尺とは感じなかったけど、観終わってデータを見たら2時間24分と、けっこう長かったのに驚いた。時間を忘れさせる水準にあることは確かだ。

●ファンタスティック 4[超能力ユニット] ★★
 (2005・米)

 監督:ティム・ストーリー
 出演:ヨアン・グリフィズ
    ジェシカ・アルバ


マーヴェル・コミックスの映画化は、『スパイダーマン』も『X−MEN』も『ハルク』も『デアデヴィル』も、みんな興行的には成功し、殆どがシリーズ化され、また、されようとしているが、これはさて、そこまで行くかどうかは未知数。
もともと他の惑星から来た宇宙人である『スーパーマン』(DCコミックス)などと違って、マーヴェルのは、なま身の人間が事故に遭って変異を起こし超能力を獲得する、というのが多いが、これもその典型で、しかも宇宙嵐に巻き込まれた4人がそれぞれまったく別の超能力を得るところ、いかにもマンガ的(笑)な設定だ。
要は安直な変身願望、と言ってしまえばそれまでだが、ここは最新CGの進歩発展ぶりをたっぷりと楽しむのが正解だろう。
4人の中では、全身が岩石になってしまう岩男=ベンがユニーク。
当初は、その醜い姿を見て仰天した婚約者に逃げられてしまって、すっかり落ち込み、生身の人間に戻るのを切望するが、やがて使命に目覚め、自らすすんで岩石男となって活躍する、その辺の心理に不思議と説得力があるのだ。こういう醜い系のキャラは、どこか寓意を感じさせもする。
ゴムみたいに伸縮するキャラのほうは『Mr.インクレディブル』がそのままパクッてるけど、これは1961年以来のこのコミックへのオマージュでもあったのだろうか…。

●NANA ★★★
 (2005・東宝・TBS 他)

 監督:大谷健太郎
 出演:中島美嘉、宮崎あおい


原作の少女漫画はまったく見てないどころか、書店の平積みで表紙を目にしたのすら映画のあとだから、先入観は一
切抜きだったが、これは元を知らずにただ映画として観ても、予期以上に惹き込まれ、感情移入できる佳作だった。
一に掛かって要因は主演の中島美嘉にある。
女優としては素人に近いが、演技っぽい演技はせずにほとんど地でやってるのが成功で、画面にいるだけで不思議な魅力と存在感があり、男勝りのタンカをきるところなどは小気味いい。
同じ歌手の主演でも、『珈琲時光』の一青窃(ひととよう)にさしたる魅力が無かったのとは大違いだ。
いかにも可愛い子チャン女優の宮崎あおいとの対比もよく出て、この配役は成功してる。
演出は、ちょっと内心を独白のナレーションで説明しすぎる嫌いはあるが、おおむね正攻法で衒いなく、及第点どころか邦画としては高評価★★★の推薦作。


●蝉しぐれ ★★★
 (2005・東宝)

 監督:黒土三男
 出演:市川染五郎、木村佳乃


このところ連続してる藤沢周平の映画化としては、『たそがれ清兵衛』に準ずる佳作。
ちなみに、単行本の発刊もこの2作は同じ年(1988)だ。
とにかく時代劇の良さを充分に堪能させてくれるが、実はこちとら、相思相愛なのに結ばれない、というストーリーには滅法よわいもんで、終幕はもう涙が止まらなくて困ったです(笑)。
役者では、木村佳乃に存在感があり、改めて感心した。
逆に、市川染五郎は貫禄がいまいちで、少年時代を演じた石田卓也(映画初出演)がなかなか精悍な好演だけに、大人になって出て来てもあまり成長した感じがせず、ちょっと配役には疑問が残る。
周囲をヴェテランで固めた中に、今田耕司やふかわりょうといったTVタレントを使っているのが、けっこう活き活きとしていて成功。
オープン・セットの日本家屋とか、四季の自然描写がとても美しく、それだけでも観る価値はある。







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