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								 【2006年2月】 
									 ●フライトプラン 
									 ●博士の愛した数式 
									 ●エリ、エリ、レマ・サバクタニ 
									 ●アサルト13 要塞警察 
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												 ●フライトプラン ★★半 
												 (2005・米・98分)  | 
										 
										
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												  監督:ロベルト・シュヴェンケ 
												 出演:ジョディ・フォスター 
												    ピーター・サースガード 
												    ショーン・ビーン 
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									 娘を守って、たったひとりで不条理な状況に立ち向かって行く逞しい母親っていう設定は、'02年の『パニック・ルーム』とまったく同様で、勇気ばかりでなく知性をも発揮して行くところは、イェール大学卒の才媛ジョディらしく、こういう役にぴったり嵌っている。 
									 ベルリンで突然の夫の事故死に見まわれ、悲嘆にくれて、遺体を収めた棺桶と共にアメリカに帰国するカル(ジョディ)が、最新鋭旅客機の機内で、一緒に乗ったはずの娘の行方不明を誰にも信じてもらえず、「最初から搭乗名簿に無い」とまで言われて、パニックに陥る…。 
									 監督のロベルト・シュヴェンケはドイツの新鋭で、これがハリウッド進出の第1作。ファンタジックな作品で評価されて来ただけあって、前半はどこか夢うつつに、ひょっとしたらこれは突然に夫を失った妻の幻想なのかも…、と思わせて、観客を半信半疑のまま引っ張って行く手腕はなかなかのもので、ジョディへの感情移入もじゅうぶんに、終始ドキドキさせてくれる。 
									 後半、思わぬやつが犯人と明かされ、陰謀の全容が判って来るにつれ、もう幻想性はなくなってハリウッド製アクション映画になるが、そこからもきっちり手順を踏んだたたみ込みで手堅く仕上げて、一気に見せる。 
									 ジョディは、片やこういう娯楽作でトップ女優の地位を守りつつ、片や監督として自分の作家性をも発揮する、稀有の才女であることを改めて確認させられる。 
									 
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												 ●博士の愛した数式 ★★★ 
												 (2005・アスミックエース 他)  | 
										 
										
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												  監督:小泉尭史 
												 出演:寺尾總、深津絵里 
												    吉岡秀隆 
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									 黒澤明の弟子・小泉尭史のは『雨あがる』『阿弥陀堂だより』と観てきて、これが3作目だが、美しい自然描写の中に善意に溢れた人々が綾なすドラマ、という点では前2作とほとんど同様で、どこかほっとさせてくれる作風は不変である。 
									 小川洋子の原作は第1回本屋大賞を獲ったりもしてベスト・セラーになり、映画化のほうも上々のヒット。 
									 ただ、多くの美点を認めつつも、どこかもどかしく、隔靴掻痒の感を拭えないのは、この博士のユニークな言動が記憶障害からくるのか、数学者としてのもともとの個性からくるのかが、いまいち判然としないところだろう。80分しかもたない記憶を補うために背広のあちこちにピン止めしたメモなど、もっと有効な使い方があると思うのだが…。 
									 薪能(たきぎのう)のシーンに原作の小川洋子がカメオ出演してるのは、御愛敬。 
									 
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												 ●エリ、エリ、レマ・サバクタニ ★★★ 
												 (2005・ランブルフィッシュ・107分)  | 
										 
										
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												  監督:青山真治 
												 出演:浅野忠信、中原昌也 
												 
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									 時代は2015年、世界中に蔓延する視覚感染(!)ウィルスを抑制するのが、日本のふたりの男が演奏する『音』だという、かなり寓話的な設定で、しかしこれは下手をすると物凄く陳腐になって笑っちゃいそうだし、本作のプロデューサー自身が「珍品です」とのたまわったそうだから、観る前は期待半分、不安半分だった(笑)。 
									 青山真治には、あの邦画史上に残る傑作『EUREKA(ユリイカ)』もそうだが、被写体の前にどっかり腰を据えてテコでも動かずに凝視め続ける、といった独特の意志があって、突き抜けた感銘を得られるものだ。 
									 今作もまさにそんな感じで、話しの設定やら展開がどうのと言うより、この映画世界にどっぷり浸れるかどうかが評価の分れ目。 
									 題名は、マタイ伝で十字架上のキリストが最期に唱えたとされる言葉、「神よ、なぜ私を見捨てたのか?」のことで、バッハの受難曲などのクライマックスでは劇的に歌われるから、クラシック・ファンにはお馴染みの部分である。 
									 ただ、内容には特に宗教性は無く、終末的絶望感を漂わせるアイテムとして付けたのか、という感じ。 
									 万人に薦められる映画でないのは勿論だが、本作との出遭いはそれなりに無駄ではなかった。 
									 
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												 ●アサルト13 要塞警察 ★★ 
												 (2005・米・110分)  | 
										 
										
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												  監督:ジャン=フランソワ・リシェ 
												 出演:イーサン・ホーク 
												    ローレンス・フィッシュバーン 
												    ガブリエル・バーン 
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									 ジョン・カーペンターの『要塞警察』('76)のリメイク。 
									 もともとオリジナル自体が、ハワード・ホークスの古典的西部劇『リオ・ブラボー』の現代版と言われたもので、カーペンターは本名で監督・脚本・音楽をやり、更にジョン・T・チャンスという名前で編集もやってるのだが、こっちの名は『リオ・ブラボー』でジョン・ウェインが演じた役名なのだった(笑)。 
									 左様にオリジナルは『リオ・ブラボー』へのオマージュでもあったのだが、さて、今度のリメイクは、『リオ・ブラボー』のあの善悪明快な爽快感に較べると、だいぶ複合したエグさに変っている。 
									 それと言うのも、敵役がガブリエル・バーン率いる警察の特殊部隊で、いわば汚れた警官であり、それに急襲される警察署の巡査部長(イーサン・ホーク)のほうは、トラウマを背負ってカウンセリングを受けている身のいわば神経質なヒーローで、そこにローレンス・フィッシュバーン演じる凶悪犯が「敵の敵は味方」の論理で共闘する…。 
									 要は善悪曖昧な混沌とした現代を反映させようという意図であり、まあ、そういう変更をしなければリメイクの意味が無いとも言えるので、『交渉人』で評価されたジェームズ・デモナコが脚本を書き、あとは演出の腕力でどう料理するか、その切れ味しだい、というわけだ。 
									 結果はまずまずで、監督のリシェのフランスで評判になった諸作は観てないが、これからに注目か。 
									 
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