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 【2005年12月】
 ●『TAKESHIS'』★★半
 ●『エリザベスタウン
 ●『ハリー・ポッターと炎のゴブレット
 ●『キングコング

●TAKESHIS' ★★半
 (2005・オフィス北野)

 監督:北野武
 出演:ビートたけし、京野ことみ


 このところのたけし映画は、それなりに入りは悪くなかったようだけど、これはかなりコケたみたいで、ランキング9位あたりに顔を出してすぐに落ちてしまった。たけし映画も、初期はともかく、相応に製作費がかかるようになった今では、これではちょっとキビしそうだ。
 こちとらは、ふたりのたけしが出て来るというので、ドッペルゲンガーか、ウィリアム・ウィルソンのたけし版かと期待したが、そういう話ではなかった。でも、たけしの相変わらずのナルシシズムは更に全開で、たけしが日々生きる芸能界の内幕やらTV局の裏側などは、かなり面白く観られた。
 一般に敬遠された理由は、観てみれば一応わかる。まず時制が入り組み、主観もあちこち移り変るので、ちょっと見にはかなりの混乱をきたし、腑に落ちないままに画面が進んでいくからだ。ただ、そういう感想もたしかにあろうが、実際の人間の意識っていうのはそんなに整然としたものじゃなく、記憶は順不同だし、夢とうつつは混在し、想念はめまぐるしく変って、まさにこんなふうに混沌としているのではないか。そういう脳内映画として観れば、充分に許容できると思うのだ。

●エリザベスタウン ★★★
 (2005・米パラマウント)

 監督:キャメロン・クロウ
 出演:オーランド・ブルーム、
    キルステン・ダンスト


 相変わらずキャメロン・クロウはいい味を出してるし、オーランド・ブルームの現代もの初出も好演で、思い入れたっぷりの選曲ともども、充分に映画を堪能させてくれる。
 ただ、問題は脚本の設定にあって、オーリー演じる靴のデザイナーの自信作がコケて、新製品が大量に返品され、責任をとらされる発端にリアリティが無いのが、大いに困る。どんな業種でも、デザイン部門とは別に販売部門やマーケティング部門があるはずで、10億ドルもの大損害を出すような規模の一大プロジェクトを、いちデザイナーだけの判断で始動させるわけがないからだ。どんな企業だって、市場に受け容れられるかどうか様子を見た上で、GOサインが出て、大量生産に踏み切る、というのが普通の常識だろう。そういう訳で、残念ながら★半分減点したけど、実は、その程度は瑕疵として目をつぶり、この映画の大部分を楽しまないと勿体無い、というのが本音です。

●ハリー・ポッターと炎のゴブレット ★★★
 (2005・米WB)

 監督:マイク・ニューウェル
 出演:ダニエル・ラドクリフ
    エマ・ワトソン、ルパート・グリント


 シリーズも4作目だが、主役の3人も大きくなったとか、原作の新刊発売の話題やら、CGの進歩などもあって、人気はまだまだ衰えない。
 今回は、魔法魔術学校が集まって対抗戦をやるというのが売りで、そこに悪の権化=ヴォルデモートの魔手がいかに延びてくるかが見所。まずは魔法術の甲子園みたいなものだけど、ただ、それが学校同士の団体戦ではなく、代表だけが出て競う個人戦なので、スケールの点でちょっと期待ハズレだったのは残念。
 それなりに楽しくは観られるが、やはり第3作の『アズカバン』に較べると、あの機智に富んだ展開や語り口の上手さのほうが一段上で、こっちは手堅くとも突き抜けた面白さとまではいかない、という不満を感じるのは、それも贅沢なことではあるかもしれない。
 ただ、原作のある読者に言わせると、前作『アズカバン』は小説のキモが描かれていないから駄目で、今作が一番いいのだそうだ。そういう御意見もあることを付記しておきます。

●キングコング ★★★
 (2005・米ユニバーサル)

 監督:ピーター・ジャクソン
 出演:ナオミ・ワッツ
    ジャック・ブラック
    エイドリアン・ブロディ


 上映時間を見て驚いた。実に3時間8分! '33年のオリジナルは100分程度だから、ほぼ倍近い長さ。'76年の1度目のリメイクだって、134分だった。そこまで引き延ばすからには、相当に改変しているのだろうか…、というのは、しかし早合点で、こんなにオリジナルを尊重したリメイクも少ないのではないかと思うほど、'33年版へのオマージュが全篇に満ち満ちている。
 それもむべなるかなピーター・ジャクソン、9歳の時にセルズニック製作版を観て以来、映画監督を志し、こんな映画を作るのをずっと夢見ていたというのだから、これはまさに巨大な「オタク映画」なのだ。
 しかし、『L.o.T.R』3部作で男を上げ、それも並行撮影という(テレヴィ映画じゃ当たり前の)極めて効率のいい方式で職人わざの手腕をも発揮し、興行的にも大成功をおさめたP.J.のこと、これだけの長尺を少しも飽きさせず、中身も薄めずに作り切ってしまった。
 実はこちとら、巷間『キングコング』が語られるとき、たいてい「美女と野獣」が引き合いに出され、ラストが「コングを殺したのは飛行機じゃない、美女が殺したんだ」という台詞で終わるのも、みんなあくまでレトリックに過ぎず、実際に人間の女と巨大なゴリラとが、恋愛感情はおろか好意を持ち合うことなど全くあり得ないと、ずっと思っていた。が、驚いたことに、ここでのジャクソンの力業は、そのへんをホントに納得させ、共感させられてしまうのだ。
 それには、ナオミ・ワッツの好演もあるが、着ぐるみでなく完全CGで作られたコングの【演技】によるところも大だろう。モーション・キャプチャーでアンディ・サーキス(=ゴラム!)の演技を取り込み、微妙な表情まで精密に作られたコングの姿は、人形の駒撮りアニメでは出来なかったこと、オリジナルのスタッフたちが夢にまで見たことを、まさに敬意をもって実現したものだ。エンド・ロールの最後には、そのオリジナルのスタッフにこの映画を捧げます、という献辞が添えられて終わる。
 しかし興行的には、ボックス・オフィス・ランキング1週目じゃ初登場3位だから、ちょっとキビしそう。こちとらは先行上映で14日(水)の夜に観たんだけど、意外に空いてて驚いた。ただ、配給としては、やることはやったんじゃないだろうか? なにしろ同じ話しの3回目なんだから、もういいって思われても仕方ないかもしれないが、3美女のなかでは、こちとら、ジェシカ・ラングはタイプじゃないし、フェイ・レイは古すぎるので、今度のナオミ・ワッツが一番いいけど(笑)。
 ともあれ、コングにはこちとらも思い入れが強いから、感心したし、泣けたんですが…。
ちょっと甘めで★★★です。








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